女性麻雀士が、2chの名誉毀損裁判で勝訴
女性プロ麻雀士のSさんが、2ちゃんねる(2ch)掲示板上に容姿等について侮辱的表現を書き込まれたとして、管理人を相手どって起こした名誉毀損裁判。 原告勝訴となりましたが、その後インターネット上でSさんへの新たな誹謗中傷バッシングが起こり、2ch裁判の原告の身に降りかかる2次被害の実態も明らかとなりました。
事件の概要
女性の容姿を中傷する書き込み
日本プロ麻雀連盟に所属する女流雀士・Sさんが、2ch掲示板内で容姿や異性関係についての中傷の書き込みをされたことに対し、
2002年6月、管理人である西村博之氏を東京地裁に提訴します。
問題の書き込みは、2ch「麻雀板」で立てられたスレッド内に、同年1月~4月にわたって書き込まれたものでした。
それらの多くは「整形しすぎ」など、事実の如何にかかわらず女性であれば耐え難い内容の侮辱表現でしたが、管理人は、
Sさんがテレビ・雑誌出演もある有名人であることから、削除対象とは見なしませんでした。
裁判の経緯
2chは「任意削除はしない」と主張
そしてSさんは、削除依頼に応じなかった管理人を相手どって裁判を起こします。
原告側の訴えは、管理人・西村氏に対して損害賠償600万円の支払いと当該書き込みの削除を求めるものでした。
口頭弁論に数回姿を表した西村氏は、名誉毀損にあたる書き込みの存在については認めたものの、
「任意削除はしない。裁判所からの削除命令があれば、すみやかに削除する」と、あくまで抗戦の姿勢を見せます。
判決は、削除と慰謝料支払いの命令
請求600万→慰謝料90万円
2003年6月25日、東京地裁の大橋寛明裁判長は「真実と認められず、Sさんを侮辱する内容だ」と述べ、
同年5月に削除を求められたのに管理人がすぐに応じなかったとして、慰謝料90万円と、5つの書き込みの削除を命じる判決を下します。
発信者情報の開示を求めた請求については「管理人は情報を保有していない」として棄却されましたが、両者控訴せず、一審閉廷となりました。
2ちゃん裁判の原告を襲う2次被害
ところが判決の数時間後、2ch掲示板には、Sさんを攻撃する書き込みが相次ぎます。
その数は数千ともいわれ、中には「殴り殺す」「とっとと首を吊れ」など脅迫めいたものもありました。
Sさんは管理人に勝訴したことで、2ちゃんねらー全体を敵にまわしてしまったのです。
さらに、Sさんが所属する麻雀店のホームページやメールアドレスには、
嫌がらせの文言が10万件以上寄せられる事態が続いたため、管理不能となり、一時ページ閉鎖に追い込まれました。
代理人・中島成弁護士によると「勝訴後の脅迫的文言については、新たな法的措置を検討している。
ネット上の書き込みは匿名なので、通常の名誉棄損よりも被害が深刻化する。
書き込み者の情報を蓄積・管理する第三者機関を創設し、この機関を通さなければ掲示板に書き込めないようにするなど対策が必要だ」と、法制面での不備を指摘します。
勝訴後の2次被害――。残念ながら、ネットでの誹謗中傷をめぐる裁判では、覚悟しておかなければならない副産物の一つです。