タレント麻木久仁子さんの名誉毀損事件

2011年、タレントの麻木久仁子さんが2ちゃんねる(2ch)の書き込みによって名誉を傷つけられたとして、 プロバイダー(インターネット接続業者)に発信者情報開示を求める裁判を起こし、勝訴しました。

事件の概要

芸能スキャンダルに便乗した誹謗中傷が

2chへの問題の書き込みは2011年1月5日に投稿されました。 タレントの麻木久仁子さんの名前を表題に含むスレッド内に、彼女の16歳になる長女を中傷するものと思われる内容が掲載されたのです。

当時麻木さんは不倫騒動の渦中にあり、インターネット上では彼女をバッシングする掲示板が乱立していました。

麻木さんは書き込み犯を割り出すために、投稿を媒介したプロバイダーの「浜松ケーブルテレビ」(静岡県浜松市)に発信者情報の開示を求めますが、 プロバイダー側は「名誉毀損に当たるかは判断しかねる」として開示を拒否。 その後、同社を相手どり、静岡地裁浜松支部に提訴します。

発信者情報の開示を求める

接続業者「裁判所に判断ゆだねる」

原告である麻木さん側の訴えは、名誉毀損にあたる書き込みをした個人を特定し、損害賠償および謝罪広告の掲載を請求するために、 プロバイダーに発信者情報の開示を求めるものでした。

裁判は、プロバイダー側が「裁判所に判断をゆだねる」として積極的に争う姿勢を示さなかったことから、即日結審となります。

静岡地裁の中野琢郎裁判官は「名誉毀損は明らか」として、原告側の主張を全面的に認め、請求通り、 発信者の名前と住所、メールアドレスの開示を命じる判決を下しました。

プロバイダーへの開示請求については、被害者の権利侵害が明白で、開示を受ける正当な理由(損害賠償請求など)があれば行うことができます。 しかし、通常、プロバイダーが発信者の同意なく情報開示することは少なく、こうしてまずは提訴するケースが大半ともいわれています。

麻木さんの勝訴

発信者情報開示が認められる

同年5月26日の判決で中野裁判官は、「記載内容が社会的信用を低下させるのは明らかで、真実でもない」と、書き込みが名誉毀損にあたる理由を述べました。

その後プロバイダーは控訴せず、麻木さんは投稿者を特定して、次の訴訟(民事、もしくは刑事)に進んだものとみられます。

実名が入っていなくても名誉毀損は成立

この裁判で異例とされたのが、問題の書き込みには「16歳長女」とあるだけで、 麻木さん本人や長女の名前は一文字も明記されていない、「匿名」に対する中傷事件であったことでした。

2ちゃんねらーの間では「誰のことを言っているのかすらわからない」と驚きの声が上がり、 スキャンダルの渦中にあった麻木さんへの反感をさらに煽る結果となりました。

その一方で、「個人名を書き込まなくても、名誉毀損が成立する」と司法が判断した点では、 横行するネットユーザーたちの悪質な中傷の書き込みの抑制剤となるか、との期待も高まった裁判です。

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